こんにちは。千葉県松戸市でパーソナルジムを経営している豊田優也です。

前回の記事では、疲労の定義と分類、そのチェック方法という基礎的な知識を解説しました。

今回は、疲労を感じる時に

  • 私たちの身体の中ではどんな反応が起きているのか
  • それに対してどのような栄養素が関わっているのか
  • どんな食事戦略が考えられるのか

を解説していきたいと思います。

疲労のメカニズム

私たちは、ストレス(後述)を受けることによって、それに対抗するために「内分泌系」「自律神経系」「免疫系」が働きます。

  • 内分泌系…副腎皮質から抗ストレスホルモンである「コルチゾール」が分泌
  • 自律神経系…交感神経を高めるために、副腎髄質から興奮系の神経伝達物質である「ノルアドレナリン」「アドレナリン」が分泌
  • 免疫系…内分泌系と自律神経系の影響を受け、炎症系のサイトカインを分泌

こうした反応は適量であれば身体の抵抗力を高めるのですが、長期間ストレスを受け続けることによって、コルチゾールの過剰分泌や交感神経系の過活動などが起こり、それが

①副交感神経系の機能低下
②酸化の進行と抗酸化能の低下
③修復エネルギー産生の低下
④免疫サイトカインの亢進及びサイトカインによる炎症、神経伝達機能抑制

といったことを引き起こします。これらが「疲労感」となって身体に現れるのです。

5大ストレッサー

疲労を引き起こす要因となるストレッサーは5つに分類されます。

ストレッサー特徴
物理的紫外線や温熱環境、騒音など物理的なストレス。
化学的化学物質や残留農薬などによるストレス。
身体的過重労働やオーバートレーニングなどによるストレス。
心理的(社会的)人間関係の軋轢などから生じる精神的ストレスで、疲労原因のトップ。
生物的ウイルスや細菌感染などによるストレス。

これらのストレッサーが、私たちの抵抗力・回復力を上回る量与えられてしまうことで、慢性疲労につながっていきます。

汎適応症候群

生体がストレスを受けたときに、それに適応しようとして生じる一連の防衛反応のことを汎適応症候群(General adaptation syndrome: GAS)と呼びます。

(ハンス・セリエ 現代社会とストレス 法政大学出版局 1988)

警告反応期
ストレッサーが加えられた直後の時期。ストレスに耐えるために内部環境を急速に準備する。闘争・逃走反応とも呼ばれる。
ショック相:体温低下、血圧低下、血糖値の低下、筋緊張の弛緩などの症状が見らる。
・抗ショック相:抵抗力が強まり、ストレッサーへの適応が本格化し始める。

抵抗期
ストレッサーと耐性が拮抗している状態。抵抗力が増して正常な機能を取り戻したように見えるが、この状態を維持し続けるためにはエネルギーが必要で、これを消費し過ぎて枯渇すると「疲弊期」に移行する。

疲弊期
長時間継続するストレッサーに心身が対抗できなくなり、抵抗力が衰え、うつ病などの病気になる時期。警告反応期のショック相に見られるような症状や、不安や抑うつといった精神症状、胃潰瘍などの消化器障害などの身体症状も引き起こす。

食事戦略

ここから、疲労のメカニズムを考慮した具体的な食事戦略について解説していきます。
まず大前提として、食事戦略の前に、そもそものストレス要因を取り除く努力をすることは必須です。

いくら良い食事習慣を持ってしても、過重労働環境やストレスの溜まる人間関係などのストレスから来る疲労に100%抵抗するというのは不可能です。このような場合は食事以前に環境を変える努力も必要となります。それを踏まえて次からの内容を見ていただければ幸いです。

そもそものエネルギー摂取

自分が1日元気よく活動していくためのエネルギーが食事から摂取できていない場合は、まずここから改善が必要です。

ここで細かな計算方法を述べることはしませんが、大よその必要エネルギーは基礎代謝基準値(こちら参照)×体重×活動係数で求めることができますので、ここを確認してみましょう。

エネルギー産生を高める栄養素の摂取

私たちの身体を動かすエネルギー源はATP(アデノシン三リン酸)です。これを生成するためにはATP –CP系、解糖系、酸化系といったエネルギー機構がありますが、これらを適切に働かせるための栄養素を摂取するのが効果的です。

特に酸化系(クエン酸回路、電子伝達系)でのATP産生が最も多いので、これを促進させる様な

糖質
ビタミンB群
クエン酸
マグネシウム

亜鉛
アルファリポ酸
コエンザイムQ10

などは必須と言えるでしょう。
特に大切なVB1の摂取方法はこちら

抑制系神経伝達物質の生成を高める栄養素の摂取

慢性疲労時は副交感神経系の働きが低下しているので、これを高めるための抑制系神経伝達物質を増やす必要があります。

これにはグリシン、γアミノ酪酸(GABA)、セロトニンなどがあります。

グリシンは魚介類、GABAは発芽玄米、トマト、そば、カカオなど、セロトニンは材料であるトリプトファンを含む魚介類、大豆、バナナなどを摂取しましょう。

また、神経伝達物質の合成を促進するVB6、葉酸、マグネシウム、鉄、亜鉛などの摂取も有効です。

貧血改善の栄養素摂取

貧血によっても体内組織への酸素の供給量が減ることでも、ATP産生が低下して疲労感に繋がります。

そもそもの鉄分の摂取、ヘモグロビンの構成要素であるたんぱく質、吸収を促進させるVC、赤血球の合成を助ける葉酸とVB12を摂取していくのが有効です。

抗酸化作用のある栄養素摂取

酸化によるストレスも、疲労を助長する要因の一つです。

酸化ストレスに対抗するためにビタミンEが使われ、この酸化されたVEを還元するためにVC、酸化されたVCを還元するためにグルタチオン、酸化されたグルタチオンを還元するためにNAD(ナイアシンから合成)が使われます。

そのため、これらの栄養素が摂取できているのかを確認するのも大切です。

今回は疲労のメカニズムとそれに関わる栄養素、食事戦略について解説しました。それぞれの栄養素についての具体的な食材を記載するとボリュームが多くなってしまうので、今回は簡略化しています。

これについてはまた別の記事でご紹介できればと思うので、そちらを参照ください。