三大栄養素である脂質、その脂質の構成要素の1つに脂肪酸というものがあります。
「脂質」と聞くとどうしても肥満やポッコリお腹とイメージが繋がってしまい敬遠しがちです。
しかし脂質という栄養素には、細胞膜を作ったり、ホルモンを作ったり、エネルギー源になったりと様々な役割があります。
そのため全体の摂取カロリーの20~30%は脂質から摂取する必要があります。
しかし、ただ単に脂質を摂ればよいのではなく、しっかりと「脂肪酸」の種類を理解して、選択して、摂取する必要があります。
脂肪酸の中には「取り過ぎてしまっていて身体に悪影響を与えているのもの」、「健康に良いのに不足しがちな、意識して摂取した方が良いもの」があります。
この記事で脂肪酸という概念を理解していきましょう。
脂肪酸の種類とは?
脂肪酸とは、三大栄養素の一つである脂質の構成成分です。
炭素(C)、水素(H)、酸素(O)の3種類の原子で構成されたものに、カルボキシル基(-COOH)が付いています。
脂肪酸には大きく分けて常温で固体の飽和脂肪酸、常温で液体の不飽和脂肪酸があります。
不飽和脂肪酸にはさらに、炭素の二重結合の数によって一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の2つに分けられます。
<脂肪酸の概念図>
飽和脂肪酸
飽和脂肪酸は主に動物性の脂に含まれる脂肪酸です。融点が高く、常温で固体であるものが多いです。
肉や牛乳などに含まれ、過剰に摂取するとコレステロール値、中性脂肪の上昇により動脈硬化を招いてしまうため注意が必要です。
不飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸は主に植物油、魚の油に含まれます。常温で液体であるものが多いです。
体内のコレステロール値を下げる役割を持っています。
炭素の二重結合の数により一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸に分けられます。
一価不飽和脂肪酸
炭素の二重結合が一つのものを一価不飽和脂肪酸と呼びます。
n-9系(オメガ9)脂肪酸がこれにあたり、代表的なものにオレイン酸があります。
オリーブオイル、菜種油、ヒマワリ油などに含まれます。
多価不飽和脂肪酸
炭素の二重結合が2つ以上のものを多価不飽和脂肪酸と呼びます。
二重結合の位置によってnー6系、n-3系に分けられます。
n-6系(オメガ6)脂肪酸
体内で作ることができない必須脂肪酸のアラキドン酸、リノール酸がn-6系脂肪酸に当たります。
コーン油、大豆油、綿実油などに多く含まれます。
リノール酸は必須脂肪酸ですが、一般的な加工食品に多く含まれている場合が多く、摂取過多になりやすいため意識して摂取する必要はないとされています。
取り過ぎでアレルギー症状を悪化させるとも言われています。
n-3系(オメガ3)脂肪酸
必須脂肪酸であるαリノレン酸、中性脂肪減少効果のあるEPA、DPAがこのn-3系脂肪酸にあたります。
摂取量が少ない方が多いため、油の中ではこのn-3系脂肪酸を積極的に摂取していきたいところです。
αリノレン酸はえごま油、亜麻仁油などに含まれ、EPA、DHAは青魚に多く含まれます。
一般的に「良い油」と呼ばれるのはこのn-3系脂肪酸の場合が多いです。
目安の摂取量はどのくらい?
日本人の食事摂取基準では、脂質の摂取量について下記の通りとなっております。
上記を目安に摂取すると良いでしょう。
摂取が推奨されるn-3系脂肪酸は、魚類に豊富に含まれています。
これらの食品を普段から摂取するよう意識しましょう。
苦手な人はサプリメントから摂取するのも良いですね。
トランス脂肪酸とは?
最近話題のトランス脂肪酸。これは、不飽和脂肪酸の一種です。
本来、不飽和脂肪酸は常温で液体のものが多いですが、これに人工的に水素添加をすることで固体にしたものがトランス脂肪酸です。
水素添加によって製造されるマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングや、それらを原材料に使ったパン、ケーキ、ドーナツなどの洋菓子、揚げ物などにトランス脂肪酸が含まれています。
トランス脂肪酸は、基本的に食品から摂取する必要がないとされています。
取り過ぎることによって体内の悪玉コレステロールの上昇、善玉コレステロールの減少を招き、動脈硬化や心臓病などの生活習慣病を誘発する可能性があるなど、人体に悪影響を与える報告がされているためです。
世界保健機関(WHO)では、健康のためにトランス脂肪酸の摂取量は総摂取エネルギーの1%以内にするようにという目標を定めています。
1日の摂取カロリーが2,000㎉だとすると、20㎉となります。
脂質は1g=9㎉なので、約2gとなります。
食材を選ぶ際には成分表をよく見ることが必要ですね。
<食品中のトランス脂肪酸含有量>
まとめ
- 脂肪酸は常温で固体の飽和脂肪酸、常温で液体の不飽和脂肪酸に分けられる
- 飽和脂肪酸は取り過ぎでコレステロール値、中性脂肪の上昇により動脈硬化を招く可能性あり
- 不飽和脂肪酸は炭素の二重結合の数により一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸に分けられる
- 多価不飽和脂肪酸の中でもn-3系脂肪酸(αリノレン酸、EPA、DHAなど)が一般的に「良い油」と呼ばれる。不足しがちなので積極的に摂取したい
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