体重を落とすために、食事を極端に落としてカロリーを制限したことのある方は多いでしょう。

運動の伴わない極端なカロリー制限が良くないことは分かっていても、運動するより食事を抜く方が手っ取り早くカロリー収支をマイナスにできます。

しかし、目先の体重減に捉われてこの様な方法を選択してしまうと、長期的に見て良くない影響があります。

今回は下記の研究を参考に、運動の伴わない極端なカロリー制限がどんな影響を与えるかをみていきましょう。



参考論文

『Metabolic and Behavioral Compensations in Response to Caloric Restriction: Implications for the Maintenance of Weight Loss』

Leanne M. Redman, Leonie K. Heilbronn, Corby K. Martin, Lilian de Jonge, Donald A. Williamson, James P. Delany, Eric Ravussin

研究方法

平均年齢36.8歳の過体重者(平均BMI27.8)48名を下記の4つのグループに分け、減量前後の体重および消費エネルギー量の変化を測定した。

グループ①(Control:コントロール群):必要エネルギーに対して100%のカロリー摂取

グループ②(CR:25%の食事制限群):必要エネルギーに対して25%摂取カロリーを制限

グループ③(CR+EX:食事制限+エクササイズ群):必要エネルギーに対して12.5%摂取カロリー削減、12.5%分のエクササイズ実施

グループ④(LCD:低カロリー群):1日890kcal(一般的な成人男性の半分以下)の食事を、体重が15%減るまで実施した後に維持

結果

体重の変化量だけで見ると低カロリー群が大きいが・・・

期間経過後の各グループの体重変化

(論文内より画像引用)

  • 4つの全ての群で体重の減少がみられる。
  • LCD(低カロリー群)においての減少幅が10~12㎏と有意に大きい。
  • CR(25%の食事制限群)とCR+EX(食事制限+エクササイズ群)とでは体重の減少幅では同程度だが、CR+EXの方が除脂肪体重の減少を抑えられている
  • CR、CR+EXではM3(3ヶ月後)からM6(6か月後)にかけても減少し続けているが、コントロール群、及びLCD群では停滞が起こっている(※LCD群に関しては、15%減少後の維持期に突入しているとも考えられる)。

 

グラフを見ると一番体重が減少しているのは、カロリーを大きく減らしたLCD群です。

しかしこのグループでは、確かに体重は減っているのですが除脂肪体重の減少が一番大きいです(グラフの黒塗り部分)。

除脂肪体重とは、全体の体重から脂肪の重量を除いた重さです。

筋肉、水分、内臓、骨などの重さで、基本的には減らない方がよいものです。

つまり除脂肪体重が減るという事は、脂肪だけでなく筋肉が大きく減少していることになります。

一番筋肉の減少を防げたのはしっかりと必要カロリーを摂取したCR群ですが、このグループでは1日の必要カロリーの100%を摂取しているためそもそも体重があまり減っていません。

残りは25%カロリーカットのCR群と、エクササイズ+12.5%カロリーカットのCR+EXです。

両グループとも体重の減少幅は同程度ですが、除脂肪体重の減少幅はCR群の方が多くなってしまっています。

筋肉を残しつつ脂肪を減らしていくためには、やはり運動と軽めのカロリー制限を組み合わせるのが一番効率的という事になります。

 

総消費エネルギー(TDEE)に与える影響

TDEEとは総消費カロリーの事で、人が1日に消費するカロリー全体を表します。

これもそれぞれの群で大きく差が出ています。

期間経過後に測定した各グループの座位でのエネルギー消費量の測定値

(論文内より画像引用)

※M3は減量開始3か月後、M6は6か月後

  • コントロール群、及びCR + EX群では総消費エネルギー(TDEE)の減少は見られなかった(コントロール群のみM3時点では多少の減少あり)。
  • CR(25%減)群、及びLCD(890㎉)群では、コントロール群、及びCR + EX群と比較して総消費エネルギー(TDEE)の有意な減少がみられる。
  • CR群とCR+EX群では体重の減少量は同等だが、期間経過後のTDEEに大きな開きが見られる(300~500㎉程度CR+EX群の方が高い)。

 

25%カロリーカットを行ったグループ、890㎉のみ摂取する過度なカロリーカットを行ったグループの両方で、消費カロリーの減少が起きてしまっています。

これは運動を伴わない過度な食事制限を行ったせいで、筋肉量が大きく減少して消費カロリーが減ったと考えられます。

こうなってしまうと、食事を元に戻した時に以前よりも太りやすく、リバウンドを招く形となります。

軽い食事制限と運動を行ったグループでは、むしろ消費カロリーが上がっています。

これを見ても、食事制限だけ行うのではなく運動によって筋肉を維持することがいかに大事かが分かります。

 

まとめ

・体重の減少効果だけで見ると、極端なカロリー制限(1日890㎉で成人の必要カロリーの半分以下)が一番減少幅が大きいが、除脂肪体重(脂肪を除いた体重)の減少も大きく、その後の総消費カロリー(TEE)の減少に繋がる。

→結果的に食事制限をなくした場合にリバウンドに繋がりやすい。

消費エネルギー及び代謝機能の低下を防ぎながら脂肪を効果的に落とす場合は、運動+カロリー制限が一番効果的。



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