こんにちは。
今回は「使える筋肉」と「使えない筋肉」について書いていきたいと思います。
よくこういった言葉を聞きます。
- 「ウェイトトレーニングで付けた筋肉は使えない筋肉だから意味がない」
- 「筋肉を付けすぎると身体が重くなって動きが遅くなる」
- 「ボディビルダーの筋肉は使えない筋肉だ」
もしかしたらこんな風に思っている方はまだまだ多いのかもしれません。
私の周りでも、同じような理由からトレーニングを避けている方が多いです。
はたして本当に、ウェイトトレーニングで付けた筋肉は「使えない」のでしょうか?
「使える筋肉」と「使えない筋肉」といった違いはあるのでしょうか?
Contents
そもそも筋肉自体に「使える筋肉」「使えない筋肉」という概念はない
早速結論を書いてしまいましたが、筋肉自体に「使える筋肉」「使えない筋肉」という概念はありません。
筋肉に違いがあるとするならば、それは筋繊維のタイプの違いのみです。
つまりウェイトトレーニングで付けた筋肉も、スポーツを行うことで付けた筋肉も基本的には同じで、下記の3つの中のいずれかに分類されるという事です。
筋繊維には速筋、遅筋、中間筋の3種類しかない
それぞれの筋肉に速筋、遅筋、中間筋の3種類があり、これらのバランスは人によって異なります。
・速筋(タイプⅡb)
収縮速度が速く、非常に大きなパワーを発揮できるが、持続時間が短い。筋繊維の太さは3つの中で一番太い。
(例)ジャンプや短距離走などの、短い時間で最大の力を発揮する種目で発揮される
・遅筋(タイプⅠ)
長い時間力を発揮し続けられるが、発揮できるパワーは非常に小さい。筋繊維の太さは3つの中で一番細い。
(例)ジャンプや短距離走などの、短い時間で最大の力を発揮する種目で発揮される
・中間筋(タイプⅡa)
速筋、遅筋の中間。
(※競技例はあくまで、その繊維が使われる割合が高いということであり、その繊維しか使われないということではありません。例えば野球の場合、中間筋だけでなく速筋、遅筋も使われています。)
「使える」「使えない」が判断される要因とは?
上記の様に筋肉自体には筋繊維のタイプの違いがあるのみで、「使える」「使えない」といった概念はありません。
では一般的に言われる「使える」「使えない」の基準はどこから来ているのでしょうか?
①まず、そもそもの筋肉を使う目的が何なのかを考える必要がある
よく言われるのが、「ボディビルダーの筋肉は見せかけの筋肉なので使えない」というものです。
確かに、例えば目的を長距離マラソンとした場合、日々高重量のウェイトトレーニングで主に速筋繊維を鍛えているボディビルダーの方ではパフォーマンスが発揮しにくいでしょう。
なぜなら長距離マラソンには、スタミナのある遅筋繊維が必要であり、スタミナのない速筋繊維はあまり必要がないからです。
この様にマラソンを目的とした場合、確かにボディビルダーが備えている大きな速筋は、(あえてそうした言い方をするなら)使えないといった事になるかもしれません。
しかしこれが、重いものを持ち上げたり、相手を力で押さえつけるといった目的であればどうでしょう?
これらの動作には強いパワーが必要です。前述の通り強いパワーを発揮するためには速筋繊維の動員が必要なので、ボディビルダーが多く備えている速筋繊維は非常に使えると言えるでしょう。トレーニングをしていない一般的な方と比べた場合の差は歴然です。
この様に、「使える」「使えない」の判断をする場合は、「まずそもそもの目的が何なのか」を考える必要があります。
この前提がない状態で、「ウェイトトレーニングの筋肉は使えない」と短絡的な結論を出してしまうのは良くありません。
②実は要因は筋肉以外のところにある
筋肉自体に「使える」「使えない」といった概念がないことはこれまで述べた通りです。
では同じ種目での競技力を目的とした場合、見た目で筋肉がある人よりも、筋肉がない人の方が良いパフォーマンスを発揮する場合があるのはなぜなのでしょうか?
これは、筋肉の力を上手く発揮するための身体の使い方や神経の伝達機能などが関わっています。
・身体の使い方
まず身体の使い方ですが、これは筋肉があるかないかは関係なしに、その人がその競技の動作をいかにうまく行えているかということです。
例えば野球のピッチャーの場合、力をボールに伝えやすい美しいフォームで投球できるピッチャーは、見た目の筋肉が大きくなくても速い球を投げることができます。
反対に筋肉量が多くても投球フォームがおかしいと、せっかく持っている筋肉の力をボールに上手く伝えることができず、速い球は投げれません。
この場合問題なのは「筋肉を付けすぎ」なのではなく「投球フォームがおかしい」ということです。
なので筋肉を付けることが悪という結論にはなりません(もちろん、その動作を阻害する部位の筋肉を大きくし過ぎたりするのは良くありませんが)。
むしろフォームの良いピッチャーは、トレーニングを行うことで更に速い球が投げられる可能性があります。
・神経伝達機能
次に神経伝達機能についてです。これは持っている筋繊維の中で、脳からの信号があった際にいかに多くを動員することができるかです。
例えば、下記の様に持っている筋肉量が違う二人でも、発揮されるパワーが同じ場合があります。
- A:筋肉量100 脳からの信号で働く筋繊維の割合50%
- B:筋肉量50 脳からの信号で働く筋繊維の割合100%
この場合、Aの方が見た目の筋肉は大きいですが、発揮できるパワーはどちらも50となり同じです。つまりBの方が神経伝達機能が高いということです。
この様に「筋肉が使えない」のではなく、「筋肉以外の部分」に違いがあるということです。
基本的にウェイトトレーニングで筋肉を付けることにはメリットが多い
競技力向上に繋がる
どんな競技においても、より強いパワーを発揮できるというのはそれだけでアドバンテージになるかと思います。
そのパワーを決定するのは筋力×速度です。
筋力は、
- 筋肉中に占めるFT(速筋)繊維の割合
- 筋横断面積
- 神経伝達機能
この3つによって決まりますが、このうち筋横断面積と神経伝達機能はウェイトトレーニングによって鍛えることができます。
つまり、競技者にとってもウェイトトレーニングは欠かせないトレーニングとなるのです。
もちろんその競技の動作を阻害しないよう、目的に合ったトレーニングをするべきなのは言うまでもありませんが、「ウェイトトレーニング=無駄な筋肉を付けてしまう」という迷信に捉われないことが大事です。
日常生活でも良いことばかり
競技者でない一般の方がウェイトトレーニングを行うことには、下記のようなメリットがあります。
見た目が美しくなる
見た目に大きな変化を与えるには筋肉を大きくする必要があります。大きくなるのは速筋繊維なので、高強度のウェイトトレーニング行うことで非常に効果があります。
日常の動作が楽になる
階段の昇り降り、電車に間に合うように走る、洗濯物カゴを持って移動など、日常で必ず行ってる動作も、筋肉量が増えることで非常に楽に感じられるようになります。
運動パフォーマンスが上がる
アスリートではない方でも、趣味で運動などをされる方は多いでしょう。前述の通り筋力が付くことで発揮できるパワーが上がり、運動パフォーマンスも向上できるでしょう。
結論
筋肉自体に「使える」「使えない」という概念はない。
「見せ筋」というものもない。
あるのは速筋、遅筋、中間筋という違いのみ
よく言われる「使える」「使えない」は、実は筋肉以外の部分によって判断されている。
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