人が身体を動かすためにはエネルギーが必要です。
では、そのエネルギーはどの様にして発生し、またどの様にして作られているのでしょうか?
今回はその仕組みについて書いていきたいと思います。
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身体を動かすエネルギー源とは?
エネルギーの源 ATP(アデノシン三リン酸)
人の身体を動かすエネルギー源となるのは、ATP(アデノシン三リン酸)と呼ばれる化合物です。
上図の様にATPは、アデニンとリボースから成るアデノシンに、3つのリン酸(P)が結合し構成されています。
リン酸とリン酸の間には「高エネルギーリン酸結合」と呼ばれるエネルギーの結合があり、これが放出される際にエネルギーが発生します(後述)。
- A・・・アデノシン(Adenosine)
- T・・・ギリシャ数字で3を表すトリ (tri)
- P・・・リン酸
この様にそれぞれの頭文字を取ってATPと呼ばれています。
エネルギーが発生する仕組み
ATPがADPに分解されることによってエネルギーは発生する
ADPは、アデノシン二リン酸と呼ばれ、アデノシンに2つのリン酸(P)が結合し構成されています。
- A・・・アデノシン(Adenosine)
- D・・・ギリシャ数字で2を表すジ (di)
- P・・・リン酸
下図の様に、3つのリン酸が結合したATPから1つのリン酸が切り離されてADPに分解される際に、高エネルギーリン酸結合が解かれ、エネルギーが発生します。
人間は、この発生したエネルギーを使って身体の筋肉を動かしたりしているのです。
しかしATPの数には限りがあります。全てのATPがADPに分解されてしまうと、私たちは身体を動かすことができなくなってしまいます。
そこで、分解されたADPからATPへと再合成する代謝機構が、私の身体には備わっているのです。
ATPを補充する3つの代謝機構
ATP-CP系(ホスファゲン系)
ATPへの再合成に、体内に蓄えたクレアチンリン酸(CP)が使われる代謝機構です。
クレアチンリン酸とは、クレアチンにリン酸が1つ結合したものです。
このクレアチンリン酸から、リン酸を取ってADPに供給することで、ATPへの再合成が行われます。
↓
ATP-CP系は短時間で非常に強度の高い運動をする際に使われる代謝機構です。
短距離走や1~5RM強度のトレーニングなどがこれに当たります。
クレアチンリン酸の備蓄量に限りがあるため、0~6秒程度しか持続することができません。
スポーツ選手やトレーニングを行う人が、サプリとしてクレアチンと摂取する目的は、ここの持続時間を延ばす点にあります。
強度の高いトレーニングをできるだけ長く行えるのは、身体強化の面で非常に効果的です。
解糖系
ATPへの再合成に、体内に蓄えた糖が使われる代謝機構です。
筋肉中に蓄えたグリコーゲン、血液に蓄えたグルコースをピルビン酸へ分解する過程でATPが生成されます(下図青枠部分)。
代謝物として乳酸が発生するため、乳酸系とも呼ばれます。
ATP-CP系の次に強度の高い運動ができ、持続時間は10~120秒程度となります。
ATP-CP系と解糖系は、代謝に酸素を使用しないため無酸素系と呼ばれます。
酸化系(有酸素系)
‘‘酸素を使い‘‘体内に蓄えた糖、脂肪を元にATPを作る代謝機構です。
糖、脂肪を材料としたアセチルCoAが、ミトコンドリア内のTCA回路と電子伝達系に入りATPを生成します(下図赤枠部分)。
アセチルCoAは、
- ピルビン酸
- 脂肪酸
- アミノ酸(グルコース、脂肪酸が不足した場合)
の3つから作られます。
酸化系は唯一、直接脂肪をエネルギーにできる代謝機構です。
また、解糖系で生じた乳酸をTCA回路でピルビン酸へ再変換し、エネルギー源とすることができます。
最もローパワーですが、長時間持続的にエネルギーを作り出すことができます。
まとめ
- 人間の身体を動かすエネルギー源はATP
- ATPがADPに分解される時にエネルギーが発生する
- ATPを補充するために、ATP-CP系(ホスファゲン系)、解糖系、有酸素系の3つの代謝機構がある
- これらの代謝機構はそれぞれ力の強さ、持続時間に違いがある
代謝機構 | 強度 | 持続時間 | タイプ |
ATP-CP系 | 強 | 1~6秒 |
無酸素系
|
解糖系 | 中 | 10~120秒 | |
酸化系 | 弱 | 120秒以上 | 有酸素系 |